カスタマーサービスに革新——“つながらないストレス”と“カスハラ”にAIオペレーターが挑む
2025年5月20日、コールセンターを中心としたインサイドセールス支援を展開するアップセルテクノロジィーズ株式会社と、AI・自然言語処理などテクノロジーのソリューションの開発・提供を行う株式会社プラスゼロは、共同開発したAIオペレーター「miraio」のサービスローンチ発表会を開催した。
本発表会では、企業のカスタマーサポートに関する調査結果や「miraio」の詳細、実際のデモンストレーションなどが行われた。
コールセンターにおける2つの課題
自動化コールセンターに関する2つの課題が、「miraio」の開発背景になっている。
まず1つが、ユーザー側のストレスだ。ユーザー調査によれば、約83%ものユーザーが自動応答システムにストレスを感じているという。「その場で的確な回答を得られない」ことがストレスの原因として最も多く挙げられた。また、一次受付が音声ガイダンスや自動応答システムだった場合、途中で問い合わせを諦めた経験があると回答したユーザーは70%にものぼる。
2つ目が、カスタマーハラスメントだ。コールセンターで働くスタッフを対象に行われた調査では約90%のスタッフがカスタマーハラスメントでストレスを受けた経験があると回答した。理不尽なストレスは、早期の離職につながる可能性もあり、コールセンターの人手不足の一因にもなり得る。人手不足に陥ると、放棄呼(電話がつながらない状態)による営業機会の損失を招きかねない。
これらの課題を解消するため、アップセルテクノロジィーズは2023年6月に資本提携したプラスゼロの特許技術、「AEI(Artificial Elastic Intelligence)」を活用し、AIオペレーター「miraio」の開発に乗り出した。
人間らしさと処理能力が「miraio」最大の特徴
「miraio」は、高度な言語処理能力と対話能力を兼ね備えたAIオペレーターだ。人間らしい受け答えと、正確な処理能力が「miraio」の大きな特徴。これは、AIビジネスライセンス、「PUT(プット)」を基幹エンジンのベースとし、コールセンター用に特化させることで実現したものだ。
「PUT」には、アップセルテクノロジィーズの特許技術「AIによるトークスクリプト自動生成」と、プラスゼロの人間のように意味を理解できるAI「AEI」が活用されている。「AEI」は、AIオペレーターによるハルシネーションリスク(※)を極限まで抑えることにも寄与している。
発表会では、実際に「miraio」によるデモンストレーションも実施された。今回のデモンストレーションは、飲食店への新規予約を想定したもの。単純な選択肢を自動音声ガイダンスで選択していく、などの従来のものとは大きく違い、AIオペレーターとの自然な会話形式で予約が可能だ。
アレルギー対応など、人間のオペレーターが漏らしがちな項目もカバー。会話の途中で、予約の変更などを挿入しても問題なく対応できる。
発表会に登壇したアップセルテクノロジィーズCEO・高橋氏は「miraio」導入について、
「ユーザー側のストレスを一定程度改善できる上、人件費や育成コストなどのカスタマーサポートに関わるコストの抑制にもつながる」
と、そのメリットを語った。
※ハルシネーションリスク=生成AIが誤った情報を生成することによって引き起こされるリスク。誤情報の拡散や信頼性の低下などが事例として該当する。
「AEI」は生産性に寄与するバランス型AI
「AEI」とは、プラスゼロが実装する二重過程モデルのAIブランド。人間が作成したルールをベースとした左脳的なAIと、機械学習などのように膨大なデータからルールを抽出する右脳的なAIを組み合わせたもの。双方の長所を生かしたバランス型のAIだ。
プラスゼロCEOを務める小代氏は、「AEI」が目指すゴールについて、「人間1人あたりの生産性の向上」であるとした。この「AEI」を活用した「miraio」は、特定の業務に特化し、専門性が高いため汎用性はあまり高くない。しかし、二重過程モデルによって、会話の流れや全体像を把握して回答する柔軟性や、回答内容に対する一定の信頼性に優れている。
今後もさまざまなシーンでの活用が期待される
「miraio」は、飲食店での予約はもちろん、テレビやラジオにおけるインフォマーシャル対応などでの展開も想定しているという。
発表会の終盤では、「miraio」のAIオペレーターをデジタルヒューマン化した、「virddy」という開発中プロダクトのプロトタイプも紹介された。「virddy」の利用シーンとしては、ドライブスルーや行政・金融などの窓口対応などが想定されている。高橋氏は、「PUT」に対する今後の展望について、「国産のAIビジネスライセンスである『PUT』がさまざまなシーンで姿を変えて活用されている状態をつくれたら」としている。
小代氏も、AEIに対する展望として、「今後も『PUT』を通じたプロダクトを力強く支えていく」とした上で、「さらに信頼性の高さと労働力的な働きが求められる領域を選んで勝負することで、世界に先駆けたイノベーションを起こしていく」と話す。具体的には金融業界における営業補助や製造業における設計やテスト、IT業界におけるシステムの運用保守などだ。
ユーザーのストレス軽減や利便性向上、コールセンタースタッフの負担軽減という課題に向き合うプロダクト、「miraio」。今後、その根幹を支える「AEI」や「PUT」の進化にも注目が集まりそうだ。
カスタマーサポートのあり方を大きく変化させる可能性を秘めた、2社のプロダクトの今後に、期待が高まる。
※本稿はPR記事です