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グリーンカーボン、フィリピンで水田由来のJCMクレジット創出プロジェクトを開始… 三菱UFJ信託銀行と共同で

2025.06.14 2025.06.13 17:51 企業
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Green Carbon株式会社は、三菱UFJ信託銀行株式会社と包括的業務提携を締結

●目次

 グリーンカーボン(Green Carbon株式会社:東京・千代田)は三菱UFJ信託銀行と共同で、フィリピンでのJCM(Joint Crediting Mechanism:二国間クレジット制度)組成に向けた実証実験を開始すると発表した。JCMは、先進国と新興国が協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減成果を両国で分け合う制度だ。つまり、先進国が新興国の温室効果ガス削減プロジェクトに技術や資金を支援し、その結果生じたCO2排出削減量を、貢献度合いに応じて両国で配分する仕組みである。

 今回の場合、日本が持っている脱炭素技術等の普及を通じて、フィリピンの温室効果ガス排出削減に貢献し、その削減分を両国の削減目標の達成に活用することになる。グリーンカーボンの大北潤社長は、6日に行われた説明会で「10年間で合計100万トン超の創出を目指す」とした。三菱UFJ信託は創出した排出枠を日本の企業などに売却する。また、将来的には売却の収益をもとにした金融商品の組成も視野に入れる。

カーボンクレジット創出が必要な理由と市場の実態

 パリ協定をうけ、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」の脱炭素社会を目指している。しかし、国内93%の企業が自社だけでは達成できないとしている。そこで、一部企業は他の企業などから「排出枠」を購入する必要がある。カーボンクレジットは、企業間などで温室効果ガスの排出削減量を売買できる仕組みのことだ。

 2023年10月、上場企業などがカーボンニュートラルを目指すための話し合いの場として「GXリーグ」を設立し、そこで自主的なGX-ETS(排出量取引制度)を試行的に開始した。そして、法改正により2026年度から、CO2排出量が年間10万トン以上の企業に対し、排出量取引制度への参加が義務化された。約300~400社が対象になると見込まれている。

 大北社長はカーボンクレジットの市場動向についてこう話す。

「GX-ETSに使えるクレジットは、国内で使われるJ-クレジット制度とJCMの2つです。J-クレジットは日本政府が認証するもの。カーボンクレジットの市場価格は右肩上がりにずっと上昇していたのですが、義務化が発表されてからは2倍まで一気に上がりました。今は調達が難しい状態になっています」

 需要に対して現在のクレジット創出は絶対量が不足しているが、日本は国土が狭く、カーボンクレジットを創出する面積が限られている。そこで、海外の提携国から輸入しようというのがJCMだ。日本政府はJCMの加盟国を広げるべく新興国と協議しており、各国とパートナー関係を構築することでJCMの運用がなされている。今年5月までに30カ国と署名を交わしており、世界でトップの提携数だ。

本プロジェクトでのクレジット創出手法

 今回のプロジェクト対象は、フィリピンのヌエバビスカヤ州の水田。数日おきに入水と自然乾燥を繰り返すAWD(間断灌漑)と呼ばれる手法を用い、メタン生成菌を抑えることでガス発生量を削減し、クレジット化する。今年3月からパイロット実証を開始しており、今後3年以内に同州の灌漑水田全域となる約2.5万ヘクタールへの展開を見込んでいる。

 なお、「実証実験」という言葉を使っているが、予定では約1000トンのカーボンクレジットが創出される予定になっており、三菱UFJ信託銀行によれば、その1000トンについてはすでに売却先が決まっているという。実証実験といっても、すでに販売をも見越した取り組みということだ。

カーボンクレジット創出の環境スタートアップ

 グリーンカーボンは2019年12月に設立され、カーボンクレジット創出・登録・販売までを一気通貫してサポートする事業を展開している。同社は東南アジアを中心に自然由来のカーボンクレジット創出に取り組み、同社のチャネルを活用し企業などに販売している。販売収益の大部分を農家にクレジット収益として還元し、クレジットの申請や登録代行の手数料を得ている。水田・バイオ炭・森林保全・牛のゲップ・植林・マングローブプロジェクト等幅広く展開中だ。国内では水田クレジット創出プロジェクトを展開し、水田のJ-クレジットの認証を取得している。

 他にも、農業関連、環境関連、米の流通、ESGコンサルティング事業を展開している。また、研究開発にも力を入れており、微生物や植物の研究を、フィリピン、ベトナム、オーストラリアの主要大学、日本の研究機関と連携し実施している。

 (文=横山渉/ジャーナリスト)

横山渉/フリージャーナリスト

横山渉/フリージャーナリスト

産経新聞社、日刊工業新聞社、複数の出版社を経て独立。企業取材を得意とし、経済誌を中心に執筆。取材テーマは、政治・経済、環境・エネルギー、健康・医療など。著書に「ニッポンの暴言」(三才ブックス)、「あなたもなれる!コンサルタント独立開業ガイド」(ぱる出版)ほか。