なぜガストやバーミヤンは「食べ残しの持ち帰りOK」? NGのチェーンとの差を生む要因とは

●この記事のポイント
・ガストでは食べ残した料理を持ち帰れる。20円の容器を注文し、食べ残しを自分で詰めて持ち帰るというスタイル
・すかいらーくHD、食品ロス削減に注力。食品廃棄量について2030年に2018年比50%削減を目標に定めている
・コメダ珈琲店は持ち帰り用容器と紙袋などを無料で提供
ファミリーレストランの「ガスト」では食べ残した料理を持ち帰れることを、知らない人は少なくないかもしれない。お客はデジタルメニューブックから「もったいないパック」(税込20円)をリクエストして容器を取り寄せ、食べ残しを自分で詰めて持ち帰るというスタイルだ。食べ残しの持ち帰りを許していない飲食店も多いなか、なぜガストは対応しているのか。また、持ち帰りOKの店とNGの店があるように、なぜ対応が分かれるのか。ガストの運営元への取材を交えて追ってみた。
●目次
すかいらーくHD、食品ロス削減に注力
ガストに限らず、すかいらーくホールディングス(HD)が運営する「バーミヤン」「ジョナサン」なども持ち帰りに対応している。背景には、すかいらーくHDが食品ロス削減に注力していることがある。同社は各課題についてKPIを設定。食品廃棄量について2030年に2018年比50%削減、2050年に同75%削減を中長期目標として定めている。達成に向けて、工場では各野菜類の歩留まりについて目標値を設定し、例えば焼売用玉ねぎのカット方法の見直しによる廃棄部分の削減や、長ネギの根に近い部分を出汁取り用として使用するなど、野菜を残さず使用する工夫を実施。加工ミスや計量ミスを減らすために計量順、原料投入順などを細かく規定した手順書を作成している。発生した規格外の商品は従業員向けに販売したり、従業員食堂のメニューに利用したりし、発生した食品廃棄物は肥料または飼料にリサイクル。工場でのリサイクル率は約90%に上る。
店舗では、使用した分の食材を毎日補充する食材の自動発注システムを導入し、食材の発注量を適切にコントロール。製造工程や保管温度などを見直し、科学的な根拠を元に食材期限の延長を行っている。調理ミスや計量ミスを発生させないよう動画や画像を活用した調理マニュアルを整備し、毎月の上長との面談の中で削減対策とKPIを個店ごとに決定している。さらに、客の食べ残しを削減するために、ご飯の量を選択可能にしたり、定食のおかずだけを注文可能にしている。
食品ロス量の計測をより正確に行うための施策も重視している。毎日の発注データ、在庫データをもとに、店舗ごと工場ごと食材ごとに細分化して食品ロス量を算出し、廃棄量の計測データをもとに店舗ごとに廃棄物量、コストを算出している。これらのデータをもとに、店舗ごとの特性に合わせた商品管理計画やオペレーション指導を実施している。
食べ残しの持ち帰りができないチェーンも多いなか、どのように可能としているのか。すかいらーくHDは次のように説明する。
「取り組みの背景としては、約3000 店舗のファミリーレストランを展開する企業として、食品ロス削減を重要な社会課題と認識し、2030年までに2018年比で 50%の食品廃棄を削減する目標を立て、取り組みを推進しています。以前から、お子様が食べきれず残してしまった時や、多く頼み過ぎてしまった時に、お客様のご要望に応じてお持ち帰り用の容器をご提供していました。
こうしたサービスをより多くのお客様に知っていただくために、『もったいないパック』と名付け、デジタルメニューブックでご注文いただけるようにしたり、推奨動画を配信するなどの取り組みを行っています(2020年9月~)。現在もったいないパックについては、税込20円にてご提供させていただいております。食べきれなかった食材のお持ち帰りにつきましては、お客様の責任の範囲でお持ち帰りいただく形となりますため、『もったいないパック』を提供する際は食品衛生上の注意事項をしっかりとご案内するようにしています(注文用のタブレット端末にて記載/お持ち帰り用の袋にも記載)。お店では、お持ち帰り容器と袋をお持ちし、お客様ご自身で容器に入れお持ち帰りいただく形としております」
ちなみに同社は持ち帰る際の注意事項として、
・刺身などの生ものや半生の食材は避けてください
・お持ち帰りのお料理は冷蔵庫に保管し、お早めにお召し上がりください
・中心部まで十分に再加熱してください
としている。
すかいらーくグループとしては、「もったいないパック」以外にも食品ロス削減のための取り組みを行っている。ユニークなものとしては、しゃぶしゃぶ食べ放題「しゃぶ葉」の全店で「こまめどりプロジェクト」を実施。客が食事終了時にきれいに食べたテーブル上の写真を撮影し、会計時にスタッフに提示すると、もれなくドリンクバー110円券をプレゼントされるというものだ。
食べ残しの持ち帰りに対応するメリットとデメリット
政府は食べ残しの持ち帰りを推進している。2024年12月には、消費者庁と厚生労働省が「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン ~SDGs 目標達成に向けて」を発表している。この発表前から、すかいらーくグループ以外でも持ち帰りを許可している外食チェーンはある。カフェチェーン「コメダ珈琲店」は一部商品について、店舗スタッフに依頼すれば持ち帰り用容器と紙袋などを無料で提供してくれる。一方、持ち帰りには対応していないチェーンもあるが、なぜ対応が分かれるのか。
「店舗側にとって客が食べ残しを持ち帰ってくれるメリットとしては、食品廃棄コストの削減あげられます。廃棄する食品を一時保管しておくためには労力、手間や保管スペースも必要になるので、トータルでみると店舗にかかる負担は低くはないです。『あの店は食べ残しても持ち帰ることができる』という点が客の来店動機につながり集客効果が生まれることも期待できるでしょう。
一方、デメリットとしては、客が持ち帰った料理が原因で食中毒などの体調不良を起こすといったトラブルが発生するリスクがあることです。小規模な個人店の場合は、持ち帰り用の容器を仕入れて保管しておくというのは、それなりに手間がかかり、保管スペースの問題もあるでしょう。ですので飲食店としては、そのメリットとデメリットを天秤にかけて、個々の事情に応じて判断をするということになります。
政府が持ち帰りを推進しており、社会的にも食品廃棄削減が重視される風潮が強まっているので、基本的には持ち帰りに対応する店が増えていくという流れになっていくのではないでしょうか」(外食チェーン関係者)
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)